「入居者から預かった敷金は、相続税の計算でどう扱うのか」。賃貸オーナーの申告で必ず出てくる項目です。結論から書くと、退去時に入居者へ返す義務のある敷金・保証金は、債務として相続財産から控除できます。預かった現金が手元に残っているかどうかは関係ありません。一方、礼金や償却される部分は返す義務がないので控除できません。
債務控除になる・ならない
| 区分 | 扱い |
|---|---|
| 敷金(退去時に返還) | 債務控除できる。預かった額のうち返還する部分 |
| 保証金(店舗・事務所の返還部分) | 債務控除できる |
| 敷引き・償却部分(返さない部分) | 控除できない。受け取った時点で貸主の収入 |
| 礼金・更新料 | 控除できない。収入 |
| 建設協力金(返還条件付き) | 返還すべき残額は債務。ただし無利息で長期の場合は評価の調整がある |
敷金は入居者の債務(未払賃料・原状回復費)を担保するために預かる金銭で、退去時に精算して残額を返します。相続開始時点で返還義務があるので、債務控除の「確実な債務」にあたります。
預かった敷金が手元にないとき
敷金は生活費や返済に使われていて、口座に別管理されていないことがほとんどです。それでも返還義務は残っているので、控除できます。逆に言えば、相続人は敷金相当の現金を受け取らずに返還義務だけ引き継ぐことになります。遺産分割では、物件を取得する相続人が敷金の返還義務も負うのが通常なので、「敷金の合計額は物件の取得者の負担」として、分け方の調整に入れておくのが公平です。
申告での確認作業
- 賃貸借契約書で各室の敷金・保証金の額と、償却の条項(敷引き)を確認する
- 入居時の入金を通帳で照合する。契約書の額と入金額が違う場合は、契約書の額(返還義務の額)で計上する
- 管理会社やサブリース会社が預かっている場合は、預り金の残高証明をもらう(オーナーの債務ではなく管理会社の預り金になっている契約もある)
- 相続開始前に退去した入居者への未返還敷金があれば、それも債務
相続後の実務
- 入居者には、貸主が変わったこと、敷金はそのまま新しい貸主が引き継ぐことを通知します。敷金を一度返して預け直す必要はありません
- 退去が出たら、精算して返還します。返還した敷金は相続人の経費にはなりません(預り金の返還)。原状回復費を差し引いた部分は収入になります
- 建物の売却時は、買主に敷金を引き継ぐ(売買代金から差し引く)のが一般的です
敷金は1室あたりは小さくても、10室・20室とまとまれば数百万円の債務になります。当センターの相続税申告では、賃貸借契約書と通帳を突き合わせて、室ごとの敷金一覧を作ったうえで申告書に載せます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。