「工場の土地建物は社長名義のままがよいのか、会社に移したほうがよいのか」。同族会社のオーナーから最も多く受ける質問の一つです。結論から書くと、相続税の評価と特例の面では「土地は個人・建物は会社」か「土地建物とも個人で有償貸付」が有利になりやすく、法人所有が有利なのは利益の蓄積を株式として後継者に移していく会社です。持ち方は3つに整理できます。
3パターンの評価のされ方
| 持ち方 | 相続財産として評価されるもの | 土地の評価 |
|---|---|---|
| A 土地建物とも社長個人(会社に賃貸) | 土地建物そのもの | 貸家建付地(自用地×約80〜85%) |
| B 土地建物とも会社 | 会社の株式 | 株式の純資産価額に相続税評価額で反映 |
| C 土地は社長・建物は会社 | 土地と株式 | 無償返還の届出+相当の対価なら自用地の80% |
AとCは、土地が社長の財産として直接評価されます。Bは不動産が会社の資産なので、純資産価額方式で路線価・固定資産税評価額に置き換えて株式の価額に含まれます。含み益の37%が控除される半面、取得後3年以内は時価のままです。
小規模宅地等の特例の区分
- A・C:会社が事業(不動産貸付業を除く)に使い、社長が相当の対価で貸していれば、特定同族会社事業用宅地等として400㎡まで80%減額できます
- B:土地が被相続人の宅地ではないため、特例の対象になりません。株式の評価の中で土地が丸ごと反映されます
自用地評価額1億円・400㎡以内の土地なら、Cは8,000万円×20%=1,600万円、Aは貸家建付地評価(借地権割合60%なら8,200万円)×20%=1,640万円になるのに対し、Bは株式の純資産に1億円(含み益部分は37%控除後)が入ります。土地の評価だけを見れば差は数千万円です。
家賃・地代の流れ
- A:会社が社長に家賃を払い、社長の不動産所得になる。会社の損金になり、社長の財産は毎年増える
- B:家賃の支払いはなく、会社の利益として残る。社長には役員報酬で渡す
- C:会社が社長に地代を払う。地代は固定資産税の2〜3倍程度が多く、Aの家賃より少額で済むため社長の財産の増え方は緩やか
Aは社長の収入が多くなる分、相続財産の蓄積も早くなります。Cは無償返還の届出と地代の整理をしておけば、特例と80%評価を両方使えます。
どのパターンが向くか
- A:会社の利益が薄く、社長が不動産収入で生活している。相続人が会社を継がず、不動産だけを残したい
- B:利益が出ていて、株式を毎年贈与したり事業承継税制で後継者に移す予定がある。家賃収入を会社に集めて役員報酬で家族に分散したい。建物だけ法人に移す方式から入る会社も多い
- C:すでにこの形になっている多くの中小企業。届出・地代・役員要件を整えれば現状のままで十分有利
持ち方を変えるには売買や贈与の税金と登記費用がかかるため、現状の評価額を出してから判断します。当センターでは、会社の株式評価と社長個人の不動産をあわせた相続税の試算を行っています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、非上場株式の評価は1社110,000円(税込)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。