「不動産は会社名義だから相続税には関係ない」と思われていることがありますが、そうではありません。結論から書くと、会社名義の不動産は、社長が持つ株式の評価を通じて相続税に反映されます。株式の純資産価額を出すときに、会社の土地建物を帳簿価額ではなく相続税評価額に置き換えるためです。
純資産価額での置き換え
純資産価額方式では、会社の資産と負債を課税時期の相続税評価額で評価し直します。不動産は次のように扱います。
| 会社の不動産 | 相続税評価額 |
|---|---|
| 自社で使う土地 | 路線価方式・倍率方式(自用地) |
| 賃貸している土地 | 貸家建付地(自用地×(1-借地権割合×30%×賃貸割合)) |
| 自社で使う建物 | 固定資産税評価額 |
| 賃貸している建物 | 固定資産税評価額×70%(借家権30%を控除) |
| 社長の土地の上の建物(無償返還の届出あり) | 建物の評価に加え、借地権として土地の自用地評価額の20%を資産に計上 |
取得後3年以内は時価
課税時期前3年以内に取得・新築した土地建物は、路線価や固定資産税評価額ではなく**通常の取引価額(時価)**で評価します。取得価額が時価として妥当なら、その金額を使うのが一般的です。買ったばかりの不動産で株価を下げることはできず、借入で買えば資産と負債が同額で並ぶだけです。3年を過ぎると相続税評価額に切り替わり、評価が下がります。
含み益に対する37%の控除
相続税評価額の合計が帳簿価額の合計を上回る差額(評価差額)には、法人税等相当額として37%を控除します。会社が不動産を売れば法人税がかかる分を差し引く考え方です。
- 例:土地の帳簿価額5,000万円→路線価評価1億2,000万円、建物の帳簿価額4,000万円→固定資産税評価額2,000万円
- 評価差額=(1億2,000万円+2,000万円)-(5,000万円+4,000万円)=5,000万円
- 控除額=5,000万円×37%=1,850万円。純資産価額は帳簿より3,150万円増える
評価差額がマイナス(含み損)のときは控除はなく、そのまま純資産が下がります。
類似業種比準方式との併用
純資産価額をそのまま使うのは小会社の原則です。会社規模の判定で中会社なら、類似業種比準価額と純資産価額を0.6〜0.9の割合で併用し、大会社は類似業種比準価額が中心です。類似業種比準価額は利益・配当・純資産(帳簿)で決まるため、不動産の含み益は純資産価額にしか出ません。規模が大きいほど不動産の影響は薄まります。
ただし、総資産に占める土地の割合(相続税評価ベース)が大会社で70%以上、中会社で90%以上などになると土地保有特定会社に当たり、規模にかかわらず純資産価額で評価します。資産管理会社や地主系の会社で起きやすい判定です。
これらの計算は取引相場のない株式の評価明細書の第5表で行い、会社の不動産一つひとつの評価が必要です。当センターでは、会社名義の不動産を含む株式評価と個人の不動産をあわせて相続税を試算しています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、非上場株式の評価は1社110,000円(税込)から、初回相談は無料で承ります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。