敷地の上空を高圧線(送電線)が横切っている土地は、送電線の下に建物を建てられない、あるいは高さや構造に制限がかかるため、利用価値が下がります。結論から書くと、送電線の地役権が設定された土地は、建築制限の内容に応じて自用地評価額の30%(建物が全く建てられない場合は50%)を控除して評価できます。財産評価基本通達では「区分地上権に準ずる地役権が設定されている承役地」として扱われ、減額の対象になり得ます。
減額の割合と根拠
通達では、地役権の目的となっている部分の自用地評価額に次の割合を掛けた額を控除します。
| 建築制限の内容 | 控除割合 |
|---|---|
| 家屋の建築が全くできない | 50%(その土地の借地権割合のほうが高ければ借地権割合) |
| 家屋の構造・用途などに制限を受ける | 30% |
建築が「全くできない」か「制限を受ける」かは、送電線の電圧で決まる離隔距離によります。電圧が高い送電線では線下に建物を建てられないことが多く、電圧が低ければ一定の高さまでなら建築できる扱いになります。どちらに当たるかは、電力会社との契約書に建築制限の内容が書かれているので、そこで確認します。
対象になる範囲の切り分け
減額されるのは土地全体ではなく、地役権の設定された範囲(線下部分)だけです。契約書や地役権図面に「電線路の両側〇mの範囲」のように記載されているので、その幅と長さから線下部分の地積を求めます。たとえば自用地評価額が6,000万円で地積300㎡、線下部分が90㎡、構造制限ありの場合、控除額は6,000万円×90㎡÷300㎡×30%=540万円です。
線下部分が土地の端にかかっているだけでも、建物の配置が制約されるため、残りの部分の利用価値にも影響しますが、通達の控除は線下部分に限られます。影響が大きい場合は通達評価と鑑定評価の使い分けも検討します。
地役権の登記と線下補償契約の確認
- 登記事項証明書の乙区:「地役権設定」「目的:送電線路の架設・保持」などの記載があれば、地役権が登記されています。承役地(制限を受ける側)の登記にだけ載るので、要役地側は確認不要です
- 電力会社との契約書:登記されていなくても、線下補償契約(補償料を一括で受け取っているものが多い)があれば、地役権と同様の制限として扱えます。契約書を探し、見当たらなければ電力会社に照会します
- 現地:鉄塔の位置と電線の経路を写真で記録し、公図に線下の範囲を落とし込みます
契約書が古く、相続人がその存在を知らないケースが多いため、現地調査で上空を見ることが見落とし防止の第一歩です。
注意点
- 鉄塔そのものの敷地を電力会社に貸している場合は、地役権ではなく貸宅地や地上権として別の評価になります
- 線下部分に小規模宅地等の特例を適用する場合は、控除後の評価額に特例を適用します
- 申告後に気づいた場合は、申告期限から5年以内なら更正の請求で還付の対象になり得ます
当センターの相続税申告では、現地と登記・契約書の調査をしたうえで線下部分の控除を検討し、書面添付で根拠を示します。土地の評価は1か所110,000円(税込)からで、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。