大阪・神戸・京都の市街地には1970年代築の分譲マンションが多く、建替えや大規模修繕の議論の最中に相続が起きることがあります。結論から書くと、相続税評価は建替えの話があっても通常どおりで、決議への参加は相続人が区分所有者として行い、建物の取壊し後に相続が起きた場合だけ評価の考え方が変わります。
評価は決議の有無で変わらない
相続税評価は、敷地権(路線価)+建物(固定資産税評価額)に区分所有補正率を掛ける通常の方法です。築40年以上なら補正率の計算で築年数のマイナスが大きく、評価水準が1を超えて減額になる室もあります。建替え決議が成立していても、建物が残っている限り評価は同じで、建替え後の資産価値の上昇は相続税の評価に反映しません(売買の時価は決議の進み具合で動くので、売るかどうかの判断では別に見ます)。大規模修繕の一時金の徴収が決まっている場合、相続開始時点で支払い義務が確定していれば債務控除の対象になります(管理費・修繕積立金の扱い)。
建替え決議への参加
建替え決議は、区分所有者の数と議決権のそれぞれ5分の4以上の賛成が要ります。2026年4月に施行された改正区分所有法では、耐震性の不足など一定の事由があるマンションは4分の3以上に緩和され、所在が分からない区分所有者を決議の母数から除く仕組みも設けられました。相続人が参加するには次の順で進めます。
- 遺産分割で取得者を決める(決まるまでは相続人全員の共有で、議決権を行使する者1人を管理組合に届け出る)
- 管理組合に区分所有者の変更届を出す(届出と名義変更の手順)
- 相続登記を済ませ、連絡先を管理組合に知らせる
共有のままでは議決権を行使できず、建替えに参加するかの回答もできないため、早めに取得者を決めます。
取壊し後・権利変換中に相続が起きたら
| 時期 | 相続財産 | 評価と特例 |
|---|---|---|
| 決議後、建物が残っている | 従来の区分所有権と敷地権 | 通常どおり |
| 取壊し後、権利変換で新しい室を取得する権利を持つ | 建替え後の専有部分と敷地利用権を取得する権利 | 建築中の建物は費用現価の70%、敷地は持分に応じた土地として評価するのが基本。個別性が高く確認が要る |
| 仮住まい中(自宅だった場合) | 同上 | 建替え中でも特定居住用宅地等の特例が使える扱いがある(建替え中の小規模宅地等の特例) |
権利変換は従前の区分所有権が建替え後の権利に置き換わる手続きで、所得税では原則として譲渡にならず課税は繰り延べられます。追加で負担する費用は、建替え後の室の取得費に加わります。
参加しない場合の売渡請求
建替えに参加しない区分所有者には、参加者や事業者から時価で売り渡すよう請求(売渡請求)ができます。応じて売った場合は通常の譲渡所得で、相続で引き継いだ取得費と、相続開始から3年10か月以内なら取得費加算を使えます。自宅として住んでいた相続人なら居住用財産の3,000万円控除も候補です。老朽アパートの建替え中の相続と同じく、建替えと相続の時期が重なると評価・特例・所得税の判断が複雑になるため、決議の前に相続の見通しを立てておくことを勧めます。
当センターでは、老朽マンションの評価と、建替えに参加する場合・売る場合それぞれの相続税と譲渡所得の試算をお出ししています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)からで、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。