相続したアパートの減価償却はどうなる?|取得価額・未償却残高・耐用年数は引き継ぎ、取得日は相続日。中古の耐用年数は使えない

相続で取得した建物の減価償却は、亡くなった方の取得価額・未償却残高・法定耐用年数をそのまま引き継いで続けます。売買のように中古資産の短い耐用年数を使うことはできません。償却方法は相続人が改めて選びますが建物は定額法に限られます。相続税評価額や登記費用は取得価額にならないこと、償却が終わった古い建物の扱い、売却時の取得費との関係をまとめます。

アパートを相続した人が最初に戸惑うのが、翌年の確定申告での減価償却です。結論から書くと、相続で取得した建物は、亡くなった方の取得価額・未償却残高・耐用年数を引き継いで、同じ計算を続けます。買った場合とは違い、中古資産として短い耐用年数で償却し直すことはできません。

引き継ぐもの

  • 取得価額:亡くなった方が建てた(買った)ときの金額。相続税評価額ではありません
  • 未償却残高:亡くなった方の最後の申告(準確定申告)の後の帳簿価額。ここから相続人の償却が続きます
  • 耐用年数:法定耐用年数(木造22年、鉄骨造は厚みで19〜34年、RC造47年)をそのまま使い、残りの年数で償却します
  • 取得日:所得税の計算では相続した日が取得日ですが、譲渡所得の長期・短期の判定や取得費では亡くなった方の取得日を引き継ぎます

償却方法は相続人が選ぶ

償却方法は相続人が改めて届け出ますが、建物と建物附属設備・構築物は定額法しか選べません(平成28年4月以後取得分)。器具備品(エアコンなど)は定率法も選べます。届出をしなければ定額法になります。

よくある間違い

  1. 相続税評価額を取得価額にしてしまう:固定資産税評価額や相続税評価額は所得税の取得価額ではありません。取得価額が分からない場合は、建築時の契約書・請求書・亡くなった方の過去の申告書(減価償却の明細)を探します。それでも不明なら概算取得費などの考え方を検討します
  2. 相続登記の費用を取得価額に入れる:登録免許税・司法書士報酬は、相続した賃貸物件については不動産所得の必要経費になります(取得価額には含めません)。相続税は経費になりません
  3. 中古の耐用年数で計算し直す:売買で取得した中古建物なら「残存年数+経過年数×20%」の簡便法が使えますが、相続では使えません
  4. 償却が終わった建物:亡くなった方の時点で償却が終わり帳簿価額が1円になっている建物は、相続人も1円のままです。償却費は出ません。賃貸割合や評価の減額には影響しません

準確定申告との分け方

亡くなった年の償却費は、死亡月までが亡くなった方の準確定申告、残りが相続人の申告です。遺産分割が年をまたぐ場合、分割までの期間は法定相続分で各相続人が償却し、分割後は取得者が全額償却します。

将来の売却との関係

相続した建物を売るときの取得費は「取得価額−償却費の累計」です。償却を正しく続けることが、売却時の譲渡所得の計算にもつながります。相続後3年10か月以内の売却なら取得費加算の特例も使えます。

当センターでは、相続税申告のご依頼とあわせて、翌年の不動産所得の申告に必要な減価償却の引継ぎ表(取得価額・未償却残高・残存年数)を作成してお渡ししています。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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