相続で揉める家には共通点があります。財産が自宅や土地に偏っていて現金で分けられないこと、そして「誰が何をもらうか」の基準を親が決めていないことです。当センターの累計1,000件を超える相談でも、揉めた家の多くは不動産が中心の家でした。結論から書くと、揉めないために親が元気なうちにやることは、①財産の一覧を作る、②相続税を試算する、③不動産を誰が引き継ぐか決める、④取り分の差を生命保険や預金で埋める、⑤遺言で残す、の5つです。 順番どおりに進めれば、話し合いは1〜2回で済みます。
1. 財産の一覧を作る(親と一緒に)
揉める原因の第一は「全体が分からないこと」です。親の預貯金、不動産(固定資産税の納税通知書)、株式、生命保険(受取人も)、借入れ、そして子や孫への生前の援助を1枚にまとめます。援助の記録が無いと、相続のときに「兄だけ家を建ててもらった」という話になります。
2. 相続税を試算する
財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかで、やることが変わります。相続税シミュレーションに一覧の数字と家族構成を入れれば、税額と配偶者の税額軽減の効果が出ます。かかる家は「誰が自宅を相続すると特例で80%下がるか」が分け方の軸になり、かからない家は純粋に公平さの問題になります。
3. 不動産を誰が引き継ぐか決める
- 自宅:同居している子、または持ち家の無い子が相続すると小規模宅地等の特例が使えます。誰も住まないなら、相続後に売って現金で分ける(換価分割)ほうが揉めません
- 貸家・貸ビル:収益が出ているなら管理できる子に、出ていないなら生前に売ることも選択肢です
- 農地・事業用の土地:継ぐ子に集めるのが原則。継がない子への配慮は次の4で
- 共有は避ける:「とりあえず兄弟で共有」は、売るにも貸すにも全員の同意が要り、次の世代で共有者が増えて動かなくなります。共有不動産の注意点
4. 取り分の差を埋める
自宅を相続する子と、しない子の取り分に差が出るのは避けられません。差を埋める方法は3つです。
- 預貯金を相続しない子に多めに渡す
- 生命保険の受取人を相続しない子にする:保険金は遺産分割の対象外で、受取人が直接受け取れます。自宅を相続する子が他の子に払う代償金の原資にもなります。生命保険で代償金・遺留分を準備する
- 生前贈与で先に渡す:年110万円の暦年贈与や相続時精算課税。亡くなる前7年の贈与は相続財産に足されるので、早く始めるほど効きます。暦年贈与の基本
遺留分(配偶者・子は法定相続分の2分の1)を下回る分け方にするなら、付言事項で理由を書き、保険で原資を用意しておきます。
5. 遺言で残す
1〜4で決めたことを遺言にします。口約束や家族会議のメモでは、相続のときに効力がありません。公正証書遺言なら検認が不要で、遺言執行者を決めておけば登記や預金の手続きを一人で進められます。費用を抑えるなら自筆証書遺言を法務局に預ける制度(手数料3,900円)があります。遺言書がないとどうなる?
親に話を切り出す言い方
「相続の話」と言うと身構える親も、「手続きの話」なら聞いてくれます。きっかけとして使いやすいのは次の3つです。
- 固定資産税の通知書が届いたとき:「この家、相続税かかるのか一度計算してみない?」
- 知人の相続の話を聞いたとき:「うちは預金の口座どこにあるか分からないから、一覧だけ作っておこう」
- 相続税のシミュレーションを見せる:数字を見せると「かかるなら早めに」と親のほうが動きます
親が認知症になると、贈与も遺言も不動産の売却もできなくなります。認知症になると相続対策ができなくなる。元気なうちに始める理由はここにあります。
税理士に相談するタイミング
財産の一覧ができた段階で一度相談すると、税額・特例が使える分け方・二次相続までの見通しを数字でお見せできます。当センターは生前のご相談も初回無料で、親御さんと子の同席も、ご自宅への訪問もお受けしています。遺言の作成は公証人や司法書士・弁護士と連携します。
まとめ
揉めない相続は、財産の一覧 → 税額の試算 → 不動産の承継者の決定 → 差額の調整 → 遺言、の順で、親が元気なうちに決めておくことで実現します。不動産が中心の家ほど「共有にしない」「差額を保険で埋める」の2つが効きます。無料相談はこちらからどうぞ。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。