「兄と2人の共有名義で相続した実家を売った。確定申告は兄がまとめてやればいい?」。答えは「各自で申告」です。結論から書くと、共有で相続した不動産を売ったときは、売却額・取得費・譲渡費用をすべて持分で按分し、相続人それぞれが自分の分の譲渡所得を確定申告します。特例の判定も控除額も各自ごとです。
計算は持分で按分
売却額3,000万円、取得費(概算)150万円、仲介手数料など費用100万円の家を、兄と弟が持分2分の1ずつで売った場合です。
| 兄(1/2) | 弟(1/2) | |
|---|---|---|
| 売却額 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 取得費 | 75万円 | 75万円 |
| 譲渡費用 | 50万円 | 50万円 |
| 譲渡所得 | 1,375万円 | 1,375万円 |
長期なら各自の税額は1,375万円×20.315%で約279万円です。持分が3分の2と3分の1のように違えば、その割合で分けます。代表者が仲介手数料などをまとめて払っていても、持分で按分した額を各自の費用にします。
特例は各自で判定する
- 取得費加算:各自が納めた相続税のうち、その不動産に対応する額を自分の取得費に足します。相続税を納めていない人(配偶者の税額軽減で0円になった場合など)は加算できません。取得費加算の計算参照
- 空き家特例:家屋の要件(昭和56年5月31日以前の建築・一人暮らしなど)は共通ですが、控除は各自の譲渡所得から引きます。2024年1月1日以後の売却では、相続人が3人以上いると一人あたりの控除は2,000万円に減ります。2人までなら各3,000万円です。売却額1億円以下の要件は、共有者全員の売却額の合計で判定します。空き家特例の要件参照
- 居住用の3,000万円控除:その家に実際に住んでいた相続人だけが使えます。同居していた子の場合参照
兄は取得費加算、弟は空き家特例、と別々の特例を選ぶこともできます。各自にとって有利なほうを選びます。
代金を代表者がまとめて受け取ったとき
買主からの入金が兄の口座に一括で入り、後で弟に持分相当を振り込む流れはよくあります。持分どおりに分配すれば贈与にはなりません。分配が持分と違うと、差額が贈与とみなされることがあるので、振込の記録は持分と一致させます。
共有名義にせず、代表者一人の名義で登記して売り、代金を分ける方法が換価分割です。この場合も売却益は分配割合で各自が申告します。遺産分割協議書に換価分割と明記しておかないと、代表者から他の相続人への贈与と見られるおそれがあります。詳しくは換価分割の確定申告をご覧ください。
申告の実務
申告期限は売却した年の翌年3月15日で、各自が自分の住所地の税務署に出します。譲渡所得の内訳書を各自で作り、売買契約書の写し、相続税の申告書の写し(取得費加算を使う人)、被相続人居住用家屋等確認書(空き家特例を使う人)を添えます。一人が申告を忘れると、その人だけに無申告加算税がかかります。
当センターでは、相続税申告をお受けした案件について、共有者それぞれの譲渡所得の試算と確定申告をまとめてお引き受けしています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、初回のご相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。