京都市の中心部や住宅地、大阪・神戸の風致地区では、建物の高さや外観、建ぺい率に厳しい規制があります。「規制が厳しいから相続税評価も下がるはず」と考えがちですが、結論から書くと、地域全体にかかる地区計画・風致地区・景観規制は原則として路線価に織り込まれているとみなされ、規制があるだけでは減額できません。減額を検討できるのは、通達に規定がある場合と、その土地に特有の著しい制限がある場合です。
路線価に織り込まれているという考え方
路線価は、その道路沿いの標準的な宅地の価格として、用途地域・建築規制・環境を前提に毎年決められています。風致地区で建ぺい率が40%に抑えられている、景観地区で高さが15mまでに制限されている、といった事情は、同じ道路沿いの土地すべてに共通するため、路線価そのものが周辺より低く付けられているのが通常です。このため、同じ規制を理由にさらに減額すると二重の減額になります。
利用価値が著しく低下している宅地の10%減額も「付近の宅地と比べて」劣ることが条件なので、地域全体が同じ規制なら対象になりません。
通達に減額の規定があるもの
| 制限の種類 | 評価の取扱い |
|---|---|
| 都市計画道路の予定地 | 容積率・地区区分・予定地の割合に応じた補正率で減額(都市計画道路予定地の評価) |
| 文化財建造物(重要文化財・登録有形文化財・伝統的建造物)の敷地 | 重要文化財・伝統的建造物の敷地は30%、登録有形文化財の敷地は25%を控除 |
| 容積率が土地の中で変わる | 容積率の差による減額(容積率が異なる宅地) |
京都市の伝統的建造物群保存地区(産寧坂・祇園新橋・上賀茂・嵯峨鳥居本)にある伝統的建造物の敷地は、この規定で30%の控除対象になり、建物自体も同様に減額されます。町家を相続した場合は、建物が「伝統的建造物」に特定されているかを市の文化財保護課で確認します。
京都市の景観規制を例に
京都市では景観法と市の条例により、地域ごとに建物の高さ(10m・12m・15m・20m・25m・31m)、屋根の形や色、看板の規制が定められています。これらは地域単位で定められているため、路線価に織り込まれているとみなされます。
ただし、次のような事情があれば個別に検討の余地があります。
- 眺望景観の保全区域で、その土地だけ建物の高さが極端に制限される
- 地区計画で壁面の後退距離や最低敷地面積が定められ、間口の狭い土地では建物を建てられない
- 通達の補正をすべて使っても、規制による価値の低下が反映されず、取引事例から見た時価を明らかに上回る
この場合は、まず規制の内容を都市計画課・景観政策課で文書で確認し、利用価値の低下が「その土地に特有」であることを説明できるかを検討します。通達の範囲で説明できないときは鑑定評価の対象になり得ます。
実務の手順
- 都市計画図で用途地域・高度地区・風致地区・景観地区・地区計画の指定を確認し、制限の内容を控える
- 同じ道路沿いの他の土地と比べて、その土地だけに不利な制限がないか見る
- 都市計画道路・文化財建造物など、通達の規定に当たるものを優先して適用する
- 残る事情は鑑定評価の要否で判断する
当センターの相続税申告では、役所で規制の内容を確かめたうえで、通達の規定に当たる減額を漏れなく検討し、書面添付で根拠を示します。土地の評価は1か所110,000円(税込)からで、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。