借入が評価額を上回る賃貸物件(債務超過物件)の相続|相続税は他の財産から引ける、収支が赤字なら引き継ぐかを考える

アパートの相続税評価額より借入の残高が大きい場合、超えた分は預金など他の相続財産から差し引けます。相続税の面では有利ですが、毎月の返済が家賃を上回る赤字物件を引き継ぐと相続人の負担になります。物件を売って残債を返す場合の譲渡所得、相続放棄や限定承認との関係、金融機関との返済条件の見直し、相続前に親ができることをまとめます。

「父のアパートの借入が8,000万円残っているが、評価は5,000万円しかない。家賃では返済が足りない」。借入で建てた物件が時間とともに赤字化し、相続のときに問題になるケースです。結論から書くと、相続税の計算では、借入が評価額を上回る分も他の財産から引けるので有利です。問題は相続税ではなく、その物件を引き継ぐかどうかです。

相続税の計算

  • 債務控除は財産ごとではなく、相続財産全体から引きます。アパート5,000万円・借入8,000万円なら、差額3,000万円は預金や自宅から引けます
  • 借入を引き継ぐ相続人の課税価格がマイナスになる場合、そのマイナスは他の相続人の課税価格からは引けません。遺産分割で借入の負担者と他の財産の取得者を合わせて考える必要があります
  • 団信付きなら借入は死亡で消え、債務控除もなくなります。物件だけが残る形になり、相続税は増えますが収支は改善します

引き継ぐか、手放すか

選択 内容 税務
引き継いで持つ 返済条件の見直し(期間延長・金利)を金融機関と交渉。家賃の見直し・修繕で収支改善 不動産所得の赤字は給与等と損益通算できる(土地の借入利子部分を除く)
売って残債を返す 売却代金で完済できれば負担は消える。足りなければ不足分を自己資金で返す 譲渡所得は「売却額−取得費−譲渡費用」。残債の額は関係ない。取得費加算は3年10か月以内
相続放棄 借入も物件も預金も、すべて引き継がない 放棄の手続きは3か月以内。他に財産がある場合は損
限定承認 プラスの財産の範囲で債務を引き継ぐ 相続人全員で行う。限定承認の税務(みなし譲渡)に注意

売却の場合、「借入が残っているから売れない」と思われがちですが、金融機関の承諾を得て抵当権を外す手続き(売却代金で完済、または不足分を返済)で売れます。抵当権付き不動産の相続の記事も参考にしてください。

相続前に親ができること

  1. 収支の実態を見る:家賃収入−返済−固定資産税−管理費−修繕積立。赤字なら、原因(空室・家賃下落・金利)を分けて考える
  2. 返済条件の見直し:期間延長や借換えで月々の返済を下げられることがある。相続後に相続人が交渉するより、本人が動くほうが通りやすい
  3. 売却の検討:評価額と時価は別です。相続税評価額5,000万円の物件が時価7,000万円で売れることは珍しくありません。残債を返せるなら、相続前に整理して現金で残すほうが相続人の負担は軽い
  4. 遺言で負担者を決める:物件と借入を同じ人に。物件と借入をセットにした遺言

当センターでは、物件ごとの評価額・時価の目安・残債・年間収支を一覧にした「持つ・売る・放す」の比較表を、相続税の試算とあわせてお作りしています。初回相談は無料です。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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