老朽アパートを取り壊して建て替える途中で相続が起きたら|更地の評価、小規模宅地等の特例が使える場合・使えない場合

古いアパートを取り壊して更地のまま相続が起きると、敷地は自用地として評価され、貸家建付地の減額はなくなります。建て替え工事中なら、相続開始直前まで貸付事業が続いていたと認められる場合に貸付事業用宅地の50%減額が使えますが、取り壊して放置していると使えません。取壊し費用の扱い、立退き中の評価、工事の時期と相続のリスクを減らす進め方をまとめます。

築50年のアパートを取り壊して建て替える。工事は1年以上かかります。その間に相続が起きたら、評価と特例はどうなるか。結論から書くと、更地の状態で相続が起きると敷地は自用地評価になり、貸家建付地の減額はなくなります。小規模宅地等の特例は、建て替え工事中であれば使える場合がありますが、取り壊したまま放置していると使えません。

段階ごとの評価

段階 建物 敷地 貸付事業用宅地の特例
入居者あり(立退き前) 貸家 貸家建付地(賃貸割合で調整) 対象
全員退去・取り壊し前 自用家屋(空き家) 自用地 原則対象外(貸付事業が止まっている)
取り壊して更地・計画なし - 自用地 対象外
建て替え工事中 建築中の建物(費用現価×70%) 自用地 建て替えのための一時的な中断なら対象
完成・入居者募集中 入居済みの部屋のみ貸家 入居済み部分のみ貸家建付地 3年ルールに注意

建て替え中でも特例が使える条件

小規模宅地等の特例は「相続開始の直前に貸付事業の用に供されていた宅地」が対象ですが、建物の建て替え中で事業が一時的に中断している場合は、相続開始直前まで事業が続いていたものとして扱う取扱いがあります。条件は、建て替え後も貸付事業を続ける計画があり、工事が実際に進んでいること(請負契約・着工)です。「取り壊したが建てるかどうか決めていない」「数年放置している」場合は対象外です。工事中の相続では、請負契約書・工事の工程表・融資の資料で、建て替えのための中断であることを示します。

立退き中の評価

一部の入居者が残っている間は、残っている部屋の分だけ賃貸割合で貸家・貸家建付地の減額があります。立退料は、亡くなった方が払えば不動産所得の必要経費(または取壊し・売却のための費用)、相続人が払えば相続人の経費です。借家人がいる貸家の記事も参考にしてください。

取壊し費用と借入

  • 相続前に払った取壊し費用は、亡くなった方の不動産所得の必要経費(建て替えのための取壊しは、新しい建物の取得価額には含めません)
  • 相続開始時に未払いの取壊し費用・建築費は債務控除
  • 建て替え資金の借入は債務控除。ただし団信付きの借入は死亡で消えるので控除できません

相続のリスクを減らす進め方

  1. 高齢のオーナーの建て替えは、工事期間(立退き〜完成〜満室)が2〜3年に及ぶことを前提に、その間に相続が起きた場合の相続税も試算しておく
  2. 取り壊しから着工までの期間を空けない。請負契約を先に結ぶ
  3. 建て替えではなく売却や借家人付きでの売却も並べて比べる
  4. 令和8年度改正で、2027年以後に取得した貸付用建物は5年以内の相続で時価の8割。建て替え後の建物も対象になります

当センターでは、建て替え計画の各段階で相続が起きた場合の相続税を一覧にした試算を、建設会社やオーナーの方からの依頼でお作りしています。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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